速さの文章題を調べていると、必ずといっていいほど目に入ってくるのが「はじき」の図だと思います。便利そうに見える一方で、親としては「本当にこれで理解が深まるのかな」「暗記に頼りすぎないか心配」と感じることもあるのではないでしょうか。この記事では、一保護者の立場から、速さの学習におけるはじきとの付き合い方や、家庭でできるサポートのポイントを整理してみたいと思います。
はじきは「速さの文章題」をラクにする道具と考える
多くの子がつまずく「速さ」と三つの関係
小学校高学年になると、「速さ」「道のり」「時間」の関係を使う文章題が一気に増えます。ところが、子どもにとってはこの三つの量のイメージが弱く、式の立て方がごちゃごちゃになりがちです。特に、「どれを割って、どれをかけるのか」が分からなくなり、毎回勘で式を書いてしまう子も多いと感じます。速さの学習が難しく見える背景には、この三つの量の関係を「式だけで覚えようとする」ことが大きいと思います。
はじきの図が教えてくれること
はじきは、丸の中を三つに区切った図に、上に道のり、下に速さと時間を入れて、かくれた文字を求めるというシンプルな仕組みです。この図のポイントは、「道のり=速さ×時間」「速さ=道のり÷時間」「時間=道のり÷速さ」という三つの関係を、一度に視覚的に確認できるところだと思います。計算が得意でない子でも、図を指で隠しながら考えることで、公式を忘れてしまう不安が少し減るのではないでしょうか。
なぜ公式だけを暗記すると危険なのか
一方で、はじきの図や公式だけを丸暗記してしまうと、問題文の意味を読まずに、図にあてはめるだけの学習になってしまうおそれがあります。例えば、「2つの速さを比べる問題」「スタート時間がずれている問題」などでは、ただ式を当てはめるだけでは対応できません。親としては、はじきが「便利な道具」であることは認めつつも、「考えずに押しボタン式で使うものではない」という意識を持っておきたいと感じます。
中学受験でどのレベルまで必要になるか
中学受験では、速さの問題はほとんどの学校で出題される重要単元です。とはいえ、受験算数の世界では、はじきそのものが必須というわけではありません。むしろ、道のり・速さ・時間の関係を「比」「図」「グラフ」などと組み合わせて、柔軟に考えられるかどうかが問われます。はじきは、あくまで「導入から基礎固めの段階で助けてくれる補助ツール」と考え、中学受験本番ではそこから一歩先の考え方へ進むイメージを持つと良いのではないかと思います。
基本の速さ・道のり・時間を家庭でイメージさせるコツ
身近な例で「道のり」「時間」「速さ」を言葉にする
はじきに入る前に、そもそも三つの量のイメージがないと意味がありません。家の近所を歩くときに、「家から駅までで何分かかった?」「だいたい何メートルくらいかな?」など、生活の中で道のり・時間・速さを口に出す習慣があると、子どもの中に自然とイメージがたまっていきます。「同じ道のりなら、時間が短いほど速い」という感覚も、実体験とセットだと納得しやすいように思います。
単位をそろえる練習は早めに分けて行う
速さの問題では、「km/h」「m/min」「m/s」など、単位の変換が入ってくるといっきに難易度が上がります。ここでつまずくと、はじき以前に計算が止まってしまいます。家庭では、速さの単元だけでなく、長さ・時間・速さの単位変換だけに集中したミニ練習を別枠で設けるとよいと感じます。単位のつまずきへの詳しい対策については、以下の記事がとても整理されていて参考になります。
算数の単位が苦手な子へ。家庭でできる単位の覚え方・変換のコツと学年別のつまずき対策
図と式を必ずセットにする習慣
はじきは便利ですが、文章からいきなり式をつくるクセがつくと、応用問題に対応しづらくなります。親としては、「まず図や線分図を書く→次にはじきや公式に当てはめる」という順番を意識して声かけしてあげると良いと思います。図に「道のり」「時間」「速さ」をきちんと書き込めるかどうかで、子どもの理解度をチェックすることもできますし、式のミスを減らす効果も期待できます。
計算ミスを減らす書き方の工夫
速さの文章題では、考え方が合っていても、計算ミスで点を落としてしまうケースが少なくありません。特に、分数や小数が混ざると、丁寧に書くことが大事になります。ノートでは、「道のり」「速さ」「時間」の列をそろえて書く」「分数は大きめに書く」といった、ちょっとした書き方のルールを決めてあげると、見直しもしやすくなります。はじきの図も、同じ場所に同じ大きさで描く習慣をつけると、焦った時にも安定して使えると思います。
はじきの使い方ステップ解説:図→文章→式
まず三つの文字の位置と意味を確認する
はじきの図は、丸を三つのエリアに分けて、上に道のり、下の左右に速さと時間を書く形が一般的です。親御さんが一緒に確認するときは、「上が一番大きな量(道のり)、下に2つの小さな量(速さと時間)」というイメージを何度も口にすると良いと思います。図だけを見て、「ここが道のり、ここが速さ、ここが時間」と子どもが説明できるようになれば、最初のハードルは越えています。
「隠した文字」が求めるものになる練習
次に、「速さを求めるときは速さを隠す」「時間を求めるときは時間を隠す」というルールを、図を使って確認していきます。指や付箋で文字を隠し、「残った形が割り算なのか、かけ算なのか」を一緒に見てみると分かりやすいです。ここで大事なのは、「残った2つの量をどう組み合わせたら意味が通るか」も言葉で説明させることです。単なる形の暗記ではなく、イメージと意味をセットにしておくと、忘れにくくなります。
速さの文章題にあてはめる手順
実際の文章題では、いきなりはじきの図を書くのではなく、まず「何が分かっていて、何を求めるのか」を整理します。例えば、「道のり」と「時間」が書かれている問題なら、「今回は速さを求めるんだね」と確認してから図を書く、という流れです。そのうえで、図に与えられた数値と単位を書き込んでから式にするという一連の手順を、毎回同じ順番で練習すると、安定して解けるようになりやすいと感じます。
間違えやすいパターンとチェックポイント
よくある間違いとしては、「分かっている量の単位をそろえずに図に書き込む」「求めるものと違う文字を隠してしまう」などがあります。家庭で見ていて「あれ?」と思ったときには、「この問題で一番知りたいのは何?」「単位はそろっているかな?」と聞いてあげるだけでも、子ども自身がミスに気づきやすくなります。また、計算だけが難しいと感じる場合は、工夫して計算する考え方をまとめたこちらの記事も参考になると思います。
中学受験算数「工夫して計算」完全ガイド|分配法則・まとまり・約分でスピードと正確さを両立
応用につなげる練習:比・グラフ・中学受験問題へ
比の考え方と組み合わせるときの注意
中学受験の速さの問題では、「2人がそれぞれ違う速さで進む」「途中まで一緒に歩いて別々の速さになる」といった場面が多くなります。このとき、単にはじきの図を2つ書くだけではなく、速さの比や道のりの比で考える問題も出てきます。家庭学習では、まず1つの速さの問題でしっかり土台を作り、その後で「2人分の図をならべて比を考える」ような練習に少しずつ広げていくと、子どもも混乱しにくいと思います。
速さのグラフとのつながりを意識する
5年生以降になると、「速さのグラフ」を使う単元も出てきます。ここでも、「速さ=道のり÷時間」という関係は変わりません。グラフでは、傾きが速さを表しているととらえられるかどうかがポイントになります。家庭では、「同じ時間でたくさん進んでいる線の方が急で、速い」「ゆっくりの人は、なだらかな線になる」といったイメージを、はじきの関係と結びつけてあげると、グラフへの抵抗感も減っていくように感じます。
5年生以降の学習との関係
速さの学習は、小学校5年生あたりから本格的になり、その後の単位学習や図形、割合などにもつながっていきます。この時期に、はじきに頼りすぎず、基本の関係をしっかり理解しておくことが、後々の中学受験算数にも大きく影響すると思います。5年生で習う内容の全体像を知っておきたい場合は、学年ごとの重要単元を整理したこちらの記事も参考になるのではないでしょうか。
小学校5年生で習う算数の全体像とは?中学受験にもつながる重要単元を解説
家庭で用意しやすい問題・教材の選び方
家庭での速さの練習用教材を選ぶときは、「図とセットで考える問題」「単位をそろえる練習」「基礎的な文章題」など、段階が分かれているものがおすすめだと感じます。いきなり難しい中学受験レベルから始めるのではなく、最初は「道のり」「時間」「速さ」のどれが分かっているかを整理するだけのシンプルな問題から積み上げていくと、子どもも自信を持ちやすくなります。無料プリントやアプリも活用しつつ、親が横で「どう考えたか」を聞いてあげる時間をとれれば理想的だと思います。
まとめ
速さの学習で使われるはじきは、便利な道具ではありますが、それだけに頼ってしまうと、応用問題で苦戦するリスクもあります。家庭では、まず「道のり」「時間」「速さ」のイメージや単位の理解をしっかり育て、そのうえで補助的に活用するくらいの距離感がちょうどよいと感じます。中学受験を視野に入れるなら、基礎をはじきで安心させつつ、徐々に比やグラフ、複雑な文章題へとステップアップさせることが大切だと思います。お子さんの様子をよく観察しながら、「今はどの段階を固める時期なのか」を意識して、無理のないペースで進めていけるといいですね。
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