小学校のテストやドリルを見ていると、「和」「差」「積」など、日常生活ではあまり使わない算数特有の言葉がたくさん出てきます。その中でも、いちばん基本のはずの「和」の意味が、子どもには意外とあいまいなことがあると感じます。足し算の問題なのに、なぜ「合計」ではなくこの言葉を使うのか、親としても少し気になるところではないでしょうか。この記事では、一保護者の立場から、算数でいう和の意味や使い方、和と差の考え方について整理してみたいと思います。
算数でいう和とは?基本の意味を親目線で整理
足し算の答えを特別に呼んだ言葉が和
算数でいう和は、「足し算の結果として出てくる数の名前」だと考えると分かりやすいと思います。例えば「3+5=8」なら、8がその式の和です。同じように、「ひき算の答えは差」「かけ算の答えは積」「わり算の答えは商」というセットで教科書に出てきます。つまり、和という言葉自体には特別な計算方法があるわけではなく、「足し算で出てきた答えをどう呼ぶか」という用語の問題だととらえておくと、親も子どもに説明しやすいと感じます。
合計との違いは?日常の言葉との橋渡し
家庭では「合計でいくら?」「全部で何人?」と聞くことが多いので、子どもからすると「和って合計と同じじゃないの?」と思うかもしれません。実際、意味としてはほぼ同じですが、算数では式との対応が分かりやすいように和という言葉を使っていると考えるとしっくりきます。親としては、「合計=たし算の答え=和」という関係を、言葉でつないであげると、教科書用語への違和感が少し減るように思います。
なぜわざわざ特別な言葉を使うのか
子どもから見ると、「どうしてわざわざ難しい言葉を使うの?」と感じるかもしれません。私自身は、この用語をそろえておくことで、あとから式を組み立てるときに便利になると考えています。「二つの数の和を求めなさい」と書かれていれば、「あ、たし算なんだな」とすぐに判断できますし、「和と差の関係」といった文章も、用語が分かっていれば読みやすくなります。中学受験レベルの文章題になるほど、こうした算数用語の理解が効いてくる印象です。
和・差・積・商をまとめて理解しておくメリット
和だけを切り離して覚えるよりも、「足し算の答え=和」「ひき算の答え=差」「かけ算の答え=積」「わり算の答え=商」という4つをセットで整理しておくと、頭の中がすっきりします。特に、かけ算の答えである積は、分数や割合の問題にもからんできますので、早めにイメージを持たせておきたい用語だと思います。積の意味については、詳しくまとまっている記事があるので、合わせて読んでおくと理解が深まりやすいと感じます。
算数の「積」とは何か?|意味・使い方・つまずき理由を家庭向けにわかりやすく解説
小学生がつまずきやすい「和」の問題パターン
単純な足し算と文章題のギャップ
低学年のころは、「3+4」「25+17」のような計算だけの問題が多く、子どももあまり深く考えずに解いていきます。しかし学年が上がると、「二つの数の和はいくつですか」「合計を求めなさい」といった文章題が増えてきます。ここで、「和という言葉が出てきたら足し算」という結びつきができていないと、式が立てづらくなることがあります。計算自体はできるのに、文章になると手が止まるタイプのつまずきです。
和と差を同時に扱う問題
もう少し進むと、「和と差に関する問題」が出てきます。典型的なのは「二人の人数の和と差から、それぞれの人数を求める」といった形式です。ここでは、和=二人分を足した数、差=二人の人数の開きといったイメージが持てているかどうかがポイントになります。言葉だけだとピンとこない子も多いので、家庭ではおはじきやブロックを使いながら、「合わせていくつ」「何人ぶん多いか」を具体的に見せてあげると、理解が進むと感じます。
「人数・お金・長さ」など場面が変わると混乱する
和に関する文章題は、人数、お金、長さ、時間など、さまざまな場面で出てきます。場面が変わるたびに、子どもは「これはたし算?ひき算?」と戸惑いやすくなります。親としては、問題を一緒に読むときに、「全部で」「合わせて」「残り」「差」などのキーワードに注目するクセをつけてあげると良いと思います。和の問題なら、「合わせて」「全部で」が出てきやすいので、そこから式を考える練習を重ねていくイメージです。
中学受験レベルになるとどう変わるか
中学受験を見据えた算数では、「和と差」「和と積」「和と平均」など、和を使った条件が複雑に組み合わさる問題が増えてきます。とはいえ、その根っこにあるのは、「足し算の結果としての和が何を意味しているのか」を理解しているかどうかです。小学生のうちから、ただ機械的に式を当てはめるのではなく、「この和は何を表しているのか?」を言葉で説明させてみると、受験算数につながる力が育ちやすいと感じます。
家庭でできる「和」の理解を深める声かけと工夫
日常会話の中であえて和という言葉も混ぜる
家庭ではどうしても「合計」「全部で」という表現が多くなりますが、算数のテストに合わせる意味で、あえて「和」という言葉も少しずつ混ぜてみるのも一つの方法だと思います。例えば、「この二つの数の和はいくつかな?」と声をかけてから、「つまり合計ってことだよ」と続ける形です。日常語と算数用語をセットで使うことで、子どもの頭の中で二つが自然につながっていくのではないかと感じます。
具体物を使って「合わせる」感覚を見せる
低学年のうちは、ブロックやおはじき、お菓子など、身近なものを使って「和」を目で見せてあげるのが効果的だと思います。例えば、「赤いブロックが3個、青いブロックが4個あるね。全部合わせた数が和だよ」といったかたちです。先に合わせる操作を目で見せてから、式「3+4=7」につなげると、和という言葉のイメージが定着しやすくなります。
線分図や図を一緒に描いてみる
文章題では、図を使って和を表現する力も大切になります。親が横で見ているときに、「二人の人数を線分で描いてみようか」「長さを一本の線で表してみようか」と促してあげると、子どもの頭の中が整理されやすいように思います。線分図の上に、和(全部の長さ)とそれぞれの部分の長さを書き込む練習をすると、和と差の関係も視覚的にとらえやすくなります。
言葉で説明させる時間をあえてつくる
問題が解けたあと、「この7って何を表しているの?」と必ず聞いてみるのもおすすめです。子どもが「二人の人数の和」「二つの長さを合わせた長さ」といった言葉を使えるようになると、単なる計算練習から、一段深い理解に進んでいるサインだと感じます。最初は言葉が出てこなくても、「全部の人数」「合わせた長さ」など、親がヒントを出しながら少しずつ言い換えさせていくと良いと思います。
和と差・和差算への橋渡し:中学受験も見据えて
和と差の基本イメージをそろえる
和と差を使う文章題では、「二つの数の和は48、差は6のとき、それぞれの数はいくつですか」といった出題がよく見られます。このとき、和=足した数、差=多い方から少ない方をひいた数というイメージがはっきりしていると、線分図を描きやすくなります。家庭で練習するときには、「どっちが和?どっちが差?」と確認しながら、図にラベルをつけてみると理解が深まると思います。
人数・長さ・お金など、場面を変えて繰り返す
和と差を使う問題は、男子と女子の人数、兄弟の年齢、テープの長さ、お金の合計など、さまざまなパターンで出てきます。場面が変わっても、「和=全部」「差=どれだけ違うか」というイメージが共通していることを意識させると良いと感じます。いろいろな場面で同じ線分図を使う練習を重ねると、どんな文章題でも落ち着いて対応しやすくなります。
和差算としての考え方を少しずつ導入
中学受験では、「和差算」という名前で、和と差から元の数を求める考え方が頻出単元になります。ただ、小学生の段階でいきなり難しい解法を詰め込む必要はないと感じます。まずは、「和は足した数」「差はひいた数」という基本をおさえ、線分図でイメージできるようにすることが優先だと思います。そのうえで、余裕があれば、「半分にすると一人分が出てくる」といった簡単な考え方から少しずつ触れていくイメージです。
積・商との違いもセットで意識させる
和や差に慣れてきたら、かけ算やわり算の答えである積・商との違いも意識させていくと、中学受験算数につながりやすくなります。例えば、「足した答えが和」「ひいて比べた答えが差」「同じ数を何個分か集めた答えが積」「分けたときの一人分が商」といった形です。四則計算それぞれの答えの意味を言葉で整理しておくと、文章題の読み取りにも強くなると感じます。
まとめ
算数でいう和は、足し算の答えを表す基本的な用語ですが、その意味やイメージがあいまいなままだと、文章題や和差算の単元でつまずきやすくなります。家庭では、「合計」「全部で」といった日常語と結びつけながら、具体物や線分図を使って、和が何を表しているのかを丁寧に確認していくことが大切だと思います。さらに、差や積・商とのセットで整理し、和と差の関係を少しずつ意識させていくことで、中学受験にもつながる土台づくりにもなっていくと感じます。お子さんの反応を見ながら、焦らず一歩ずつ、「言葉」と「イメージ」の両方から支えていけると良いですね。
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