「算数の受験対策、何から手をつけたらいいんだろう」——この悩みは、受験を意識し始めた家庭ほど一度は通る気がします。塾の宿題は出る。テストもある。でも、点が伸びる日と伸びない日があって、親のほうが落ち着かない。そんな状態のまま時間だけが過ぎると、焦りが先に立ってしまいます。
受験算数が「難しい」と感じる理由は、単に問題が難問だからではありません。実は、基礎が抜けたまま応用へ進む、解き方の「型」を持たない、演習が不足して定着しないといった、いくつかの要素が重なって「難しい」に見えていることが多いです。つまり、全体を一気に変えようとしなくても、要素を分けて整えれば、手触りが変わってきます。
この記事では、受験算数を「漠然と難しい科目」ではなく、「手順で伸ばせる科目」として整理し直すことを目指します。志望校が決まっている家庭にも、まだふわっとしている家庭にも使えるように、判断の軸を丁寧に置きます。途中で「演習量」や「継続」が必要になる場面では、記事だけでは完結しにくいことにも自然に触れながら、家庭でできる現実的な整え方をまとめます。
受験算数が「難しい」と感じる理由を分解する
「基礎ができていない」の中身は一つではない
「基礎が弱い」と言われると、つい計算ドリルの量を増やす方向へ気持ちが動きがちです。でも、基礎の中身は一枚岩ではありません。たとえば、四則計算ができても、分数になると急に遅くなる。文章題を読むと式が立たない。図にすると見えるのに、式だけだと迷う。こうした差は、単なる努力不足というより、「土台の種類が違う」ことから起きます。
家庭でまずやりたいのは、基礎を「計算の基礎」「数量感覚の基礎」「言葉の基礎」に分けて見ることです。計算は正確さと速さ。数量感覚は、割合や比で「どっちが基準か」を見抜く力。言葉の基礎は、条件を読み取って整理する力。どこが弱いかで、次の一手が変わります。
「できない」ではなく「どの種類の基礎が足りないか」を言語化できると、対策が急に現実的になります。親の役割は答えを教えることより、状態を整理してあげることだと感じます。
受験算数は「単元」だけでなく「つなぎ目」で差がつく
受験算数は頻出単元がある一方で、単元をまたぐ出題が多いのが特徴です。たとえば、速さの問題に比や割合が混ざる。図形で比を使う。平均の問題が表の読み取りとセットになる。こうした「つなぎ目」で、解ける子と止まる子が分かれやすくなります。
ここで起きやすいのが、「単元はそれぞれ勉強したのに、混ざるとできない」という現象です。これは珍しいことではありません。単元別の練習はできても、情報を整理して一本の筋にする練習が足りないと、混ざった瞬間に迷子になります。
受験算数の難しさは「知っている」より「組み立てる」にあります。組み立て力は、才能というより練習の方向で育ちます。
「思考力問題」は特別ではなく、日々の読み方の延長
最近は「思考力問題」という言葉が独り歩きして、不安を大きくすることがあります。ただ、実際に求められるのは、特殊な発想よりも「条件を整理する」「図や表に落とす」「試して確かめる」といった、普段の算数の延長であることが多いです。
思考力が必要な問題ほど、問題文が長くなり、情報が散らばります。そこで、読み方が弱いと、内容の難しさ以前に入口でつまずきます。逆に言えば、読み方と整理の手順を持てば、思考力問題の怖さは少し薄れます。
「ひらめき勝負」ではなく「整理の手順勝負」と捉えると、家庭でも取り組みやすくなります。
受験算数の勉強法を「順番」で整える
基礎→標準→解き直し→過去問の意味を家庭用に翻訳する
受験算数の学習は「基礎を固めてから応用」というのが王道ですが、家庭で回すとなると抽象的に聞こえます。そこで、家庭用に翻訳するとこうなります。基礎は「毎回同じミスを減らす」。標準は「解き方の型を増やす」。解き直しは「間違いの原因を特定する」。過去問は「点の取り方を決める」。この四つは役割が違うので、同じ時間の使い方をしてはいけません。
たとえば、基礎の段階で難問に時間をかけると、達成感はあっても「毎回同じミス」が残ります。逆に、過去問の段階で基礎ばかり回していると、試験の時間配分や取捨選択が育ちません。どの段階かを意識するだけで、取り組みの質が変わります。
同じ30分でも、「いま何を育てる30分か」がはっきりすると、親子の会話が荒れにくくなるのも大きいです。
「基礎」は計算だけではない——式と図の型を増やす
基礎というと計算練習のイメージが強いですが、受験算数の基礎には「型」が含まれます。割合なら線分図、速さなら道のり図、比なら面積図のように、典型問題で使う表現を持っているかどうかで、スタートの速さが変わります。
型がないと、毎回ゼロから考えることになります。もちろん考える力は大切ですが、入試は時間が限られています。型があることで、思考を「発明」ではなく「選択」にできます。選択できれば、見直しもしやすくなります。
家庭では、解法を丸暗記させるのではなく、「この問題はどの図で整理する?」と聞くほうが、型を育てやすいです。答えより先に「整理の道具」を選ばせるイメージです。
「解き直し」が伸びる家庭と伸びない家庭の分かれ目
解き直しは大切だとわかっていても、続かないことがあります。理由は単純で、解き直しが「もう一回解く」だけになってしまうからです。それだと、たまたま次は合うこともあり、原因が残ります。
家庭でおすすめなのは、解き直しを3種類に分けることです。①計算ミス型(途中式と検算を整える)、②読み違い型(条件に線を引き、図や表に写す)、③方針迷子型(「どの型で整理するか」を決める)。同じ間違いでも種類が違えば対処が変わります。
「なぜ間違えた?」を詰問するより、「どの種類のミス?」と一緒に分類するほうが、子どもも答えやすくなります。
頻出分野を「単元」ではなく「機能」で押さえる
割合・比は「基準」を見抜く練習が中心になる
割合や比は頻出で、苦手意識も出やすい分野です。つまずきの核心は、計算そのものより「基準(もとにする量)」が揺れることにあります。問題文の中で、何が基準で、何が比べられているのかが見えないと、式が立ちません。
この分野は、いきなり解かせるより、まず「基準はどれ?」だけを問う練習が効果的です。線分図を描くなら、最初に「100%はどこ?」を決める。比なら「1:?」の1が何を表すかを固定する。基準が固定できると、あとは計算がついてきます。
割合・比は「計算」より「置き場所」。置き場所が決まれば、焦りが減ります。
速さは「単位」と「そろえる」ができれば崩れにくい
速さの問題で多い失点は、「何をそろえるか」が曖昧なまま進むことです。時速と分速が混ざる、分と秒が混ざる、距離の単位が揃っていない。こうした状態だと、正しい式でも答えがずれます。
速さの基礎は「道のり=速さ×時間」だけではなく、「単位をそろえる」「比べる対象をそろえる」です。家庭での声かけは、「単位、そろってる?」の一言で十分なことが多いです。長い説明よりも、チェックポイントが効きます。
なお、式の扱いでつまずく場合は、式そのものより「文字や式の意味」が曖昧になっていることがあります。式を「書く」のではなく「読める」ように整える視点は、速さでも役立ちます。
ここに関連して、式の読み方を家庭で整理した記事があります。今回の記事とは切り口が異なりますが、土台づくりの参考になります。
中学受験で差がつく算数の文字と式|つまずく理由と家庭でできる整理・対策法
https://chugakujuken-zero-shop.pal-fp.com/unit-study-math/6nensei-sansuu-moji-to-shiki/
図形は「見えない線」を足す前に、条件を日本語で固定する
図形は補助線が話題になりがちですが、補助線を引く前に必要なのは「条件の固定」です。どこが平行で、どこが同じ長さで、どこが直角か。これを言葉で整理できないと、線を増やしても迷いが増えます。
家庭でできるのは、図を見ながら「わかっていることを3つ言ってみて」と促すことです。平行、等しい角、等しい辺、同じ面積など、言えるものを増やすと、補助線が「必要だから引く」に変わります。
図形は「線を増やす」より「情報を固定する」。この順番を守るだけで、苦手意識が軽くなることがあります。
学年別に「いま優先すべきこと」を決める
4年生:土台の穴を小さくする時期
4年生は、受験を決めていなくても算数の学習量が増え、内容も広がります。この時期は、先取りよりも「穴を小さくする」ことが後で効きます。たとえば、計算の精度、分数の意味、図や表の読み取り。ここが揺れると、5年生以降の応用で急に苦しくなります。
家庭での判断軸は、「解けたか」より「説明できたか」です。式が合っていても、なぜその式なのかが説明できない場合は、理解が薄い可能性があります。短い会話で確認できる範囲から整えるのがおすすめです。
早く進むより、戻るコストを減らす。4年生はそれが一番の得になります。
5年生:単元横断が始まるので「型」を増やす
5年生になると、割合・速さ・図形などが本格化し、単元横断の問題が増えます。ここで大事なのは、難問を解けることより「型」を増やすことです。型とは、線分図、道のり図、表、場合分けの樹形図など、情報整理の道具です。
型が増えると、初見問題でも入口が作れます。入口が作れれば、途中で詰まっても戻れます。逆に型が少ないと、毎回の問題が「初めての体験」になり、疲れてしまいます。家庭での声かけは「この問題、どの整理でいく?」が効果的です。
また、受験用の公式の扱いが気になる家庭も増える時期です。公式は丸暗記だと崩れやすいので、意味と使い分けを整えるほうが安定します。
関連して、家庭で公式を整理する考え方をまとめた記事があります。今回の記事とは目的が違いますが、型づくりの補助になります。
中学受験に効く「算数 公式」整理術|面積・体積・割合・速さ・平均を家庭で使いこなす完全ガイド
https://chugakujuken-zero-shop.pal-fp.com/math-strategies/sansuu-koushiki-home-guide/
6年生:点を取る順番と「捨て方」を決める
6年生は、実力そのもの以上に「点の取り方」で差がつく時期です。全部解こうとすると時間が足りず、取りやすい問題でミスが出ます。だからこそ、解く順番と捨て方(後回しにする基準)を決めることが重要になります。
家庭でやれることは、過去問や模試の復習で「何で落としたか」を整理することです。難問で落としたのか、標準で落としたのか。計算ミスか、読み違いか。ここが見えると、次回の作戦が立てられます。特に、配点が大きい学校ほど、標準問題の取りこぼしが痛くなります。
6年生は「新しいことを増やす」より「失点を減らす」に比重を置くと、気持ちも学習も安定しやすいです。
塾あり・塾なしで迷うときの判断軸
塾に通うかどうかは、家庭の事情や子どもの性格で最適解が変わります。ここでは「どちらが正しい」ではなく、判断軸を置きます。塾ありは、学習のペースメーカーと情報量が強みです。一方で、宿題が多くなると、解き直しが薄くなりやすいリスクがあります。
塾なしの場合は、ペースと教材選びを家庭で担う必要がありますが、学習の密度は上げやすいです。ただし、演習量と継続を一人で回すのは簡単ではありません。記事を読んで理解が進んでも、定着は「繰り返し」なしでは作りにくいので、無理のない演習の仕組みを用意することが大切です。
その仕組みとして、短時間で回せる計算や基礎のプリントを固定枠にするのは一つの方法です。負担を増やすためではなく、「迷わず始められる」状態を作るための道具として考えると、家庭に馴染みやすくなります。
まとめ
受験算数が不安に見えるときほど、まずは「難問を解けるか」ではなく、「何が原因で失点しているか」を分解すると道筋が見えます。基礎の種類(計算・数量感覚・読み取り)を分ける。単元ではなく「つなぎ目」でつまずくことを知る。思考力問題も整理の手順の延長として捉える。こうした視点だけでも、対策が現実的になります。
勉強法は、基礎→標準→解き直し→過去問という流れを、家庭用に役割分担して回すのがポイントです。頻出分野は「基準」「単位」「条件固定」といった機能で押さえると崩れにくく、学年が上がるほど「型」と「失点減らし」が効いてきます。
そして、演習量と定着は、どうしても記事だけでは完結しにくい領域です。無理に増やすのではなく、続けられる形に落とし込むことが、受験算数を「伸ばせる科目」に変える一番の近道だと感じます。
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