小学2年生になると、算数で大きな山のひとつが「かけ算(九九)」です。授業が始まると、宿題に九九が出たり、学校で九九テストが始まったりして、家庭でも急に「練習モード」になります。けれど、いざ家で取り組もうとすると、「プリントは必要?」「毎日どれくらい?」「覚えられないのは普通?」と、迷いが次々に出てきます。周りの子がスラスラ言えているように見えるほど、焦りが強くなることもあります。
ただ、九九は「暗唱できるかどうか」だけで終わる単元ではありません。もちろん、暗唱は大事です。でもその先に、ランダムで答えられるか、逆から出されても崩れないか、文章題で「何がいくつ分」を読み取れるか、という力がつながっています。だからこそ、家庭では「量を増やす」だけではなく、今の段階に合った練習の形を選ぶことが大切になります。
この記事では、2年生のかけ算(九九)を、家庭で無理なく定着させるために、考え方と手順を整理します。無料プリントや市販教材、九九表やアプリなど、手段はいろいろありますが、どれも万能ではありません。大切なのは、「段階(いまどこ?)」×「定着度(どれくらい安定?)」×「教材の形(家庭で回る?)」で選び直せることです。読み終えたときに、今日から回せる小さなメニューが作れる状態を目指します。
2年生のかけ算は「暗唱だけ」で終わらない
九九は「言える」より「使える」を目標にしたほうが崩れにくい
九九の練習というと、まずは暗唱が中心になります。ここで「言えるようになった!」となるのは大きな一歩です。ただ、家庭でよく起こるのは、順番なら言えるのに、バラバラに出されると止まる、という状態です。これは珍しいことではありません。順番で言う九九は「歌」に近く、記憶の出し方が別物だからです。
この段階で焦って全部をランダムにすると、子どもは「言えるのに怒られる」感覚になりやすく、気持ちが折れやすくなります。そこで大事なのは、「言える」と「使える」を分けて考えることです。順番で言えるようになったら、次はランダムで「少しずつ」使えるようにしていく。階段を一段ずつ上がるイメージが合います。
九九は「暗唱の完成」ではなく「計算の土台作り」だと思うと、練習の設計が少し柔らかくなります。家庭での声かけも、「できた/できない」ではなく「どこまで安定してきた?」に変えやすくなります。
「何がいくつ分」が見えないと、文章題で急に止まる
暗唱が進んでいても、文章題になると急に止まる子がいます。その理由は、九九の記憶の問題ではなく、かけ算の意味がまだ言葉と結びついていないことが多いです。かけ算は「同じ数がくり返し出てくる」状況を、まとめて表す計算です。つまり、文章の中から「同じ数」「くり返し」を見つける力が必要になります。
ここでよくあるのが、足し算で解こうとして時間がかかる、あるいは、数字が出てきた順に掛けてしまう、というパターンです。家庭では、式を教える前に「同じ数はどれ?」「それが何回?」という問いを置くと、意味がつながりやすくなります。物の数や列の数など、身近な場面で確認するだけでも十分です。
文章題は「九九の暗唱」より「意味の読み取り」が中心になります。暗唱と別の筋肉を使うと知っておくと、つまずきに対して落ち着いて対応しやすくなります。
九九は「時間」で追い込むほど逆効果になることがある
九九テストがあると、家庭でもタイムを測りたくなります。ただ、タイムは扱い方次第で、味方にも敵にもなります。うまくいかないときに時間で追い込むと、緊張で余計に出てこなくなり、「覚えられない」印象だけが残りやすいです。
おすすめは、最初は「正確さ優先」で、タイムは本人の記録として扱うことです。「昨日より少し言える段が増えた」「止まる回数が減った」という変化を、点数や時間以外でも拾う。そうすると、練習が続きやすくなります。
九九のタイムは「比較の道具」ではなく「成長のメモ」として扱うほうが、家庭学習は安定しやすいです。
九九の練習は「段階」を作ると迷わない
段階1:順番で言える(まずは土台を作る)
最初の段階は、2の段から順番に言えるようにすることです。このときのコツは、全段を一気にやらないこと。家庭では、学校の進度に合わせて、まずは習った段だけを確実にするほうが成功しやすいです。いきなり9の段まで全部やると、負担が大きく、定着前に疲れてしまいます。
順番で言えるようにする練習は、声に出す・リズムに乗せる・カードでめくる、など形式を変えると飽きにくいです。ただ、どんな方法でも、最後は回数が効いてきます。だからこそ、1回を短くして、毎日回せる形にしておくと続きます。
段階1は「早く全部」より「今日の範囲を安定」が大切です。土台が薄いまま次へ進むと、あとで「戻る時間」が増えやすいです。
段階2:ランダムで答えられる(順番の歌から卒業する)
順番なら言えるようになったら、次はランダムです。ただし、いきなり全ランダムにすると難しく感じやすいので、段を限定してランダムにするのが現実的です。たとえば「今日は3の段だけランダム」「次は4の段も混ぜる」というように、範囲を小さく保つと、成功体験が残りやすいです。
ランダムでのつまずきは、覚えていないというより「引き出しが整っていない」状態であることもあります。そこで、止まりやすいところだけをメモして、そこを重点的に回すほうが効率的です。全部を同じ量で回すより、弱いところを薄くなくすのが近道になります。
段階2は「弱点を見つけて薄くする」のが目的です。ここでプリントを使うなら、段別・ランダム別に分かれているもののほうが回しやすいです。
段階3:逆から・穴あき・文章題(「使える九九」へ)
九九が安定してくると、次に必要になるのが「逆から出されても崩れない」「答えから式を作れる」「文章題で使える」という段階です。たとえば「□×3=12」「24÷6の逆算的な見方(まだ割り算前でも、対応関係として)」など、九九は後の割り算にもつながっていきます。
この段階は、急に難しく感じることがあります。だからこそ、順番で言う練習をゼロにせず、短く残しながら、穴あきや文章題を少しずつ足すのが安心です。比率としては、順番2割・ランダム6割・応用2割のように、中心をランダムに置く家庭が多い印象です(家庭の負担に合わせて調整で十分です)。
段階3は「九九を「道具」として使う練習」です。ここに入ると、暗唱の不安は減り、算数全体が少し楽になります。
家庭で使う教材の選び方(無料プリント・表・アプリ)
無料プリントは「段別×定着度別」になっていると回しやすい
家庭学習で最も多いニーズは、すぐに使える練習問題だと思います。無料プリントの良さは、量を確保しやすいことです。ただ、プリントを集めすぎると、親が管理しきれず、結局続かないこともあります。
選び方の軸はシンプルで、「段別で練習できる」「ランダム問題がある」「テスト形式(時間を意識した形)がある」「逆算や穴あきがある」のどれが必要かを、今の段階に合わせて選ぶことです。段階1なら段別中心、段階2ならランダム中心、段階3なら穴あきや文章題も少し、というように、必要な形は変わります。
プリントは「たくさん集める」より「回す一軍を決める」ほうが、家庭では成果につながりやすいです。印刷できない日用に、計算カードや口頭クイズなど代替手段も用意しておくと、習慣が途切れにくくなります。
九九表・ポスターは「見る→隠す→外す」の順にすると依存しにくい
九九表やポスターを貼るかどうかは、家庭で意見が分かれやすいところです。貼ることで目に入る回数が増え、安心材料になるのは確かです。一方で、ずっと見える状態だと、見て答える癖がついてしまう心配もあります。
そこでおすすめなのが、段階を作ることです。最初は貼って良い。次に、隠しシートなどで「見る量」を減らす。最後は外す。こうすると、視覚の支えを使いながらも、最終的に自力で出せる状態に移行しやすくなります。
九九表は「貼るか貼らないか」ではなく「どう卒業するか」で考えると、家庭でも使いやすい道具になります。
アプリは「楽しさ」と「回数」を作れる反面、主役にしすぎない
アプリは、ゲーム感覚で回数を増やせるのが魅力です。紙が苦手な子にとっては、入り口としてとても助けになります。ただ、アプリはテンポが良いぶん、間違えた理由を振り返りにくいことがあります。また、無料の場合は広告が出る、課金導線がある、といった家庭の判断ポイントも出てきます。
家庭での位置づけとしては、「回数を増やす補助」に置くとバランスが取りやすいです。たとえば、毎日の最後に3分だけ、移動時間にだけ、などルールを決める。紙のプリントや口頭チェックと組み合わせて、弱点を見つける部分は紙で、回数はアプリで、のように役割分担すると、効果が出やすくなります。
アプリは「続ける力」を借りる道具と考えると、使いすぎの心配も減ります。
「覚えられない」「できない」と感じたときの見立て
原因は「量不足」だけではない(4つに分ける)
九九が覚えられないとき、すぐに「練習が足りない」と考えがちです。でも、実際には原因はいくつかに分かれます。たとえば、①そもそも「言い方」が定まっていない(リズムが崩れる)、②10のまとまりや数の感覚が弱く、意味がつながりにくい、③似た段が混ざる(6の段と8の段など)、④緊張やプレッシャーで頭が真っ白になる、というように、同じ「出てこない」でも中身が違います。
ここを分けずに量だけ増やすと、③や④のタイプはむしろ悪化することがあります。家庭では、どの段で止まるのか、どんなときに出ないのかを観察して、原因に近いところから整えるほうが近道です。
「努力不足」と決めつけず、「どのタイプ?」と一緒に整理すると、子どもも話しやすくなります。
「間違い方」にクセがあるなら、先にそこを潰す
九九の誤答には、よくあるクセがあります。たとえば、7×8を7×7の49に引っ張られる、6×4を6×5の30に近づけてしまう、などです。これらは、覚えていないというより、隣の答えに引っ張られている状態です。
この場合、全体を均等に練習するより、「間違えやすいペア」だけを短く繰り返すほうが効きます。家庭でできる簡単な方法は、間違えたところに印をつけて、翌日はそこから始めることです。弱点の密度を薄くしていくイメージです。
九九は「全部やり直す」より「引っかかる点をほどく」ほうが、短時間で成果が出やすいです。
演習は必要。ただし「短く・毎日・同じ型」が現実的
九九は、理解だけで定着しにくい単元です。この記事を読んで整理できても、最後はどうしても「繰り返し」が効いてきます。ただし、長時間の詰め込みは疲れや反発につながりやすいので、家庭では短く回すほうが向いています。
たとえば、1日10分で、①今日の段を順番で1回、②ランダムを10問、③間違えたところを3回、のように、型を固定する。これなら親も迷いにくく、子どもも「終わりが見える」ので続けやすいです。
定着は「やる気」より「仕組み」で作る。この発想でメニューを組むと、家庭学習は安定します。
2年生全体の算数の中で、九九がどこに位置づくかを確認したいときは、単元の全体像を整理した記事があると安心です。九九だけを見ていると、時刻や長さ、筆算など他の負担が影響していることに気づきにくいからです。
小学2年生で習う算数は何をどこまで?単元の全体像と家庭で迷わない整え方
https://chugakujuken-zero-shop.pal-fp.com/elementary-math/2nen-narau-sansuu-tangen-seiri/
また、2年生算数を家庭で伸ばす全体設計(時刻・長さ・かさ、筆算、九九のバランス)をまとめた記事もあります。九九だけに偏らず、家庭の時間配分を考えるときに役立ちます。
小学2年生の算数|「時刻・長さ・かさ」と筆算・九九を家庭で伸ばす設計図(中学受験を見据えた親の伴走術)
https://chugakujuken-zero-shop.pal-fp.com/elementary-math/shougaku-2nen-sansuu/
まとめ
2年生のかけ算(九九)は、暗唱が目立つ単元ですが、目標は「言える」だけでなく「使える」状態を作ることです。順番で言える→段を限定したランダム→逆から・穴あき・文章題、という段階を作ると、家庭でも迷いが減ります。教材も、無料プリント・九九表・アプリなど選択肢がありますが、今の段階と家庭で回る形に合わせて「役割」を決めると続きやすいです。
「覚えられない」と感じたときは、量不足だけでなく、混ざりやすい段、緊張、リズムの不安定など原因を分けて見立てることが大切です。最後はやはり演習が必要ですが、短く・毎日・同じ型で回すと、親子ともに負担が小さく、定着につながりやすくなります。焦りやすい単元だからこそ、仕組みで支える形を家庭のペースで作っていけると安心です。
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