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算数が嫌いと言い出したときの整理術|算数嫌いをほどく5つの見立て

「算数が嫌い」「もうやりたくない」と子どもが言い出すと、保護者としては胸がぎゅっとなります。成績のことだけでなく、宿題のたびに親子の空気が悪くなることや、「このまま放っておいていいのかな」という不安が一気に押し寄せやすいからです。

ただ、ここで大事なのは、算数嫌いを「性格」や「やる気」の問題に見えやすい一方で、実際は「つまずきの構造」と「日々の体験(声かけ・成功体験・失敗体験)」が重なって起きることが多い、という点です。

この記事では、子どもの気持ちを否定せずに状況を整理し、家庭でできる立て直しの考え方をまとめます。すぐに解けるようにする話だけではなく、親子関係を壊さないための判断軸、必要なら外部の力を借りる目安まで扱います。読むだけで完結する部分もありますが、算数はどうしても「慣れ」が必要になる場面があります。無理のない形で続けられる道筋も一緒に考えていきましょう。

算数嫌いは「感情」より先に「原因の型」を探す

「嫌い」の中身は1種類ではない

同じ「嫌い」でも、子どもの中身はかなり違います。たとえば、問題を見る前から拒否する子もいれば、やり始めるけれど途中で固まってしまう子もいます。前者は「算数=嫌な時間」という印象が強く、後者は「わからない瞬間」に強いストレスが出ていることが多い印象です。ここを混ぜると対策がズレやすくなります。

保護者の側はつい「勉強量が足りないのかな」「集中力かな」と考えがちですが、まずは「どの場面で嫌がるか」を細かく切り分けるほうが、結果的に近道になります。たとえば「宿題の最初だけ」「テストの直前だけ」「文章題だけ」「計算ドリルだけ」のように、嫌がる場面には偏りが出やすいからです。

「嫌い」が強く出る場面は、子どもにとって「失敗しそう」「恥ずかしい」「怒られそう」が結びついていることが多いです。ここを見つけられると、改善の方向が「やらせ方」ではなく「つまずきの手当て」と「体験の作り直し」に移せます。

急に嫌いになったように見えるときの見方

昨日まで普通にやっていたのに、ある日から突然「嫌い」と言い出すケースもあります。このとき、保護者としては出来事を探したくなりますが、実際は「積み重なった負荷がある日あふれた」パターンも少なくありません。

きっかけになりやすいのは、テスト・宿題の増加・単元の変化・説明の抽象度が上がったタイミングです。たとえば繰り上がり/繰り下がり、かけ算、わり算、小数や分数、図形の面積などは、理解があいまいなまま進むと「わからないのに進む」状態になりやすい単元です。すると子どもは「できない自分」を守るために、最初から距離を置くようになります。

このときに役立つのが、「嫌い」を「守りのサイン」として見る視点です。嫌い=怠け、ではなく、嫌い=これ以上傷つきたくない、かもしれません。そう考えると、声かけも変わりますし、最初にやるべきことも「叱咤」ではなく「負荷の棚卸し」になります。

親の教え方が原因?と自分を責めそうなとき

家庭学習をしているほど、保護者は「自分の教え方が悪かったのかな」と思いやすいです。もちろん、言葉が強くなった日があれば影響はゼロではありません。ただ、ここで大切なのは、原因を「誰のせい」にするより、現状を「どう直せる形にするか」に切り替えることです。

算数が嫌いになる流れは、たいてい単独要因ではなく、「理解の穴」「スピード不足」「問題文の読み違い」「失敗体験」「比較・評価の痛み」が重なります。だからこそ、保護者が「私はダメだ」と背負い込むと、次の行動(具体的な立て直し)にエネルギーが回りません。

ここでは、「原因は探すが、犯人探しはしない」を合言葉にすると整理しやすいです。子どもも保護者も、これからの作戦会議をするチームだと置き直すと、落ち着いて手が打てます。

算数嫌いが深くなる家庭の「すれ違い」をほどく

「わからない」を言えない空気ができると長引く

算数で一番つらいのは、答えが違うことそのものより、「わからない」と言えないまま時間だけが過ぎることだと思います。わからないと言ったら怒られる、ため息をつかれる、説明が長くなる、結局できない…という経験が重なると、子どもは「最初からやらない」ほうを選びやすくなります。

保護者側は善意で教えているのに、子ども側は「追い詰められている」と感じる。ここにすれ違いが生まれます。算数嫌いが強いほど、子どもは「できない自分」を隠したいので、曖昧な返事や適当な答えで場を終わらせようとすることもあります。すると保護者は「ふざけている」と感じ、さらに強い言葉になりやすい。悪循環です。

この悪循環を切る最初の一歩は、「わからない」を言っても安全な場を作ることです。勉強の技術以前に、ここが整うかどうかで回復速度は大きく変わります。

声かけは「評価」より「実況」に寄せる

算数の場面で、子どもが敏感に反応しやすいのは「評価」です。「なんでできないの」「前も言ったよね」「簡単だよ」は、保護者にとっては事実確認でも、子どもには評価の矢になります。評価が続くと、算数は「できる/できないを判定される時間」になり、嫌いの芽が育ちます。

代わりに意識したいのが「実況」です。たとえば「ここで止まったね」「この問題文のこの部分が難しそうだね」「今、計算の途中で迷ったね」のように、起きていることを一緒に言語化する。すると子どもは「責められていない」と感じやすくなり、次の一手(どこが分からないか)に意識を向けやすくなります。

実況は、上手に言う必要はありません。ポイントは「子どもの尊厳を守りながら、状況を外に出す」ことです。算数嫌いは、内側で膨らんだ不安が原因になりやすいので、外に出して小さくするだけでも前進になります。

「放置」か「過干渉」かで迷うときの判断軸

算数嫌いが出ると、保護者は「放っておくとますます遅れるのでは」と焦ります。一方で、追い立てると逆効果になりそうで怖い。この板挟みは本当によく起きます。

ここでの判断軸は、量の問題より「関わり方の質」です。完全放置は、理解の穴が広がる場合がありますが、毎日長時間の矯正は感情の反発を強めます。おすすめは、「短く・具体的・終わりが見える」関わり方に寄せることです。たとえば「今日は1問だけ、一緒に原因を探す」「5分だけ、どこで止まるか観察する」など、子どもが逃げ場を失わない設計にします。

また、放置してよいか迷うときは、「宿題をやらない」よりも「問題を見ただけで強い拒否が出る」「体調に影響が出る」「自分を責める言葉が増える」など、生活面のサインを重視するとよいです。生活のサインが強いときは、勉強量よりも安心感の回復が先になります。

単位が絡む問題でつまずいていると、算数全体が嫌いに見えやすいことがあります。よくある学年別の引っかかりと家庭での整え方を別記事で整理しています。

算数の単位が苦手な子へ。家庭でできる単位の覚え方・変換のコツと学年別のつまずき対策
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「嫌い」をほどく家庭学習の立て直し方

最初は「解けるようにする」より「崩れない形」にする

算数嫌いの立て直しというと、つい「できるようにする練習」を探したくなります。でも最初の段階は、成績よりも「崩れない形(続けられる形)」を先に作るほうが回復しやすいです。理由は単純で、嫌いが強いときは、正しい練習でも実行できないからです。

崩れない形の条件は3つあります。1つ目は「短い」。2つ目は「終わりが見える」。3つ目は「失敗しにくい」。たとえば、1ページ10問のドリルでも、子どもにとっては「10回失敗の可能性がある」ように見えます。そこで「今日は2問だけ」「同じ型を3回だけ」など、失敗の回数が見えすぎない形にします。

この段階では、解き方の説明を長くするより、「どこで止まった?」を一緒に確認して、止まった地点の負荷を下げるほうが効果的です。嫌いが和らぐと、その後の練習が初めて意味を持ちます。

「つまずきの場所」を1段浅い単元まで戻す

算数のつまずきは、今やっている単元だけの問題に見えて、実は1〜2段下の基礎が原因になっていることがあります。たとえば、文章題が苦手に見えて、実際は計算が遅くて途中で混乱している、というケース。図形の公式が苦手に見えて、実際は単位換算が曖昧で答えが合わない、というケースです。

ここでのコツは、「今の問題が解けない」→「前の単元に戻る」ではなく、「今の問題のどの要素が重いか」を分解して、その要素だけを1段浅くすることです。たとえば、文章題なら「文章の読み取り」「立式」「計算」の3要素に分け、重い部分だけ軽い形にします。計算が重いなら、文章題を続けるのではなく計算の型だけ短くやり直す。読み取りが重いなら、数を小さくして文の構造だけ追う。こうすると「戻りすぎて退屈」も起きにくくなります。

嫌いが強いほど、戻ること自体が「自分はダメだ」のサインになりやすいので、戻すときの言い方も大事です。「前ができてないから」ではなく、「ここを軽くすると、今が楽になるから」と目的を未来に置くと受け入れられやすいです。

演習は「量」より「設計」で効き方が変わる

算数は、ある程度の反復が必要な場面があります。ここで「もっとやらせないと」と量の話になりやすいのですが、量を増やすほど反発が強くなる子もいます。そこで意識したいのは、量より設計です。

設計で大事なのは、「同じ型を続けすぎない」「できた体験が混ざる」「間違い直しが痛くならない」の3点です。たとえば、全部が難しい問題だと自信を失い、全部が簡単だとバカにされた気持ちになります。できた体験と、ちょっと考える体験が交互に入ると、気持ちが折れにくいです。

また、間違い直しは必要ですが、嫌いが強い段階で「赤で全部直す」形にすると、ノートが「失敗の記録」になってしまうことがあります。最初は、「間違いの原因だけを短く言葉にする」くらいから始めると、心理的負担を減らしつつ学びを残せます。

家庭で作るのが難しいときは、印刷して使える形(問題の並びが設計されているもの)を活用すると、親子の衝突が減りやすいです。記事だけで完結させようとせず、「続けやすい器」を借りるのも選択肢です。

「引き算」あたりから算数が嫌いになり始めた、という相談はとても多いです。考え方のズレが起きやすいポイントを別記事で整理しています。

小学生の算数・引き算が苦手になる理由と家庭でできる考え方の整え方
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環境・特性の可能性を考えるときの見方

学校や先生との相性が影響しているケース

算数嫌いの背景に、学校の進め方や先生との相性が関わっていることもあります。たとえば、板書のスピードが速い、説明が抽象的、当てられるのが怖い、間違えると笑われる雰囲気がある、など。子どもは「算数が嫌い」という言葉でまとめがちですが、実際は「その場が怖い」だけかもしれません。

家庭でできるのは、まず「算数の内容が嫌いなのか、授業の体験が嫌いなのか」を分けて聞くことです。ここで詰問にならないように、雑談の中で「算数の時間ってどんな感じ?」と状況を聞くのがよいです。内容ではなく体験が原因なら、家庭学習は「安心して分かる場」を補う役割になり、立て直しが早まることがあります。

逆に、授業体験が強い原因のときは、家庭で無理に量を増やすより、短時間で「分かる感覚」を取り戻すほうが効果的です。学校で傷ついた気持ちが癒える前に追い込むと、算数そのものが「逃げたいもの」になってしまいます。

発達特性が気になるときに大切な距離感

「数字が極端に苦手」「式の並びを追えない」「簡単な計算でも混乱する」など、特性が気になって不安になることもあります。こういうとき、保護者としては原因がはっきりしてほしくて、早く結論を求めたくなります。ですが、ここは慎重さが大切です。

家庭でできるのは、診断を決めつけることではなく、困り方のパターンを記録することです。たとえば「繰り上がりだけ苦手」「文章を読むと崩れる」「図形の見取りが苦手」「時間制限があると極端に崩れる」。この情報は、学校への相談や専門機関での相談のときにも役立ちます。

また、特性の有無にかかわらず、支援の基本は「負荷を分解して、手順を見える形にする」ことです。結論を急がず、まずは子どもが困っているところに合わせて環境を整える。そうすると、必要な相談の見通しも立ちやすくなります。

外部の力を借りる目安と、選ぶときの考え方

家庭で頑張っても、どうしても親子の衝突が増える場合があります。あるいは、子どもが強い拒否を示し、生活や睡眠に影響が出ている場合もあります。こういうときは、外部の力を借りるのは「逃げ」ではなく、状況を守るための選択です。

目安の一つは、保護者が「教える役」になることで関係が悪化しているかどうかです。教える役を外に出すと、保護者は「応援役」に戻れます。応援役に戻れるだけで、子どもは安心し、算数への抵抗が下がることがあります。

選ぶときは、成績を短期で上げることだけでなく、「子どもが安心して間違えられる場」を作れるかを見たいです。算数嫌いの立て直しは、正解率だけでは測りにくく、「取り組めるようになった」「質問できた」「自分で直せた」といった小さな変化が重要だからです。

まとめ

算数が嫌いになったとき、保護者はつい「どうやって勉強させるか」に意識が向きやすいですが、最初にやりたいのは「嫌いの中身」を分けて原因の型を見つけることです。

嫌いは、怠けではなく「これ以上つらくなりたくない」という守りのサインであることが多く、つまずきの構造(どこで止まるか)と体験(声かけ・比較・成功体験)が重なって強くなります。だからこそ、犯人探しではなく、状況を外に出して作戦会議に変えることが回復の第一歩になります。

家庭での立て直しは、いきなり量を増やすのではなく、短く終わりが見える形で「崩れない器」を作るところから始めると続きやすいです。つまずきは要素分解して、重い部分だけを1段浅くし、できた体験と少し考える体験を混ぜながら積み上げていきます。算数は記事を読むだけで一気に変わるものではなく、どうしても「慣れ」が要る場面があります。無理なく続けられる形を選び、必要なら外部の力も借りながら、子どもが安心して取り組める状態を取り戻していきましょう。

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