小学校の算数では、「和」「差」「積」「商」という少し硬い言葉が出てきます。その中でも、わり算で出てくる商は、計算自体はできても、何を表しているのかを子どもがうまく説明できないことが多いと感じます。中学受験を考えるご家庭では、単なる筆算のやり方だけでなく、商の意味をしっかり理解しておくことが、割合や速さといった重要単元につながっていきます。ここでは、一保護者の視点から、算数で使う商の意味やつまずきやすいポイント、家庭でできるサポートについて整理してみたいと思います。
算数でいう商とは?基本の意味を親目線で整理
わり算の答えとしての商
算数で使われる商という言葉は、「わり算の結果として出てくる数の名前」です。例えば「12÷3=4」という式なら、4がその式の商になります。「和」「差」「積」「商」というセットで覚えると、足し算・ひき算・かけ算・わり算それぞれに対応する答えの呼び名が整理されます。こうしておくと、文章題で「商を求めなさい」と書かれていても、子どもが「これはわり算の問題なんだ」と判断しやすくなると感じます。
被除数・除数との位置関係を押さえる
わり算では、割られる数、割る数、答えにそれぞれ名前があります。割られる数を「被除数」、割る数を「除数」、そしてその結果としての答えが商です。筆算の形で見ると、上に書くのが商、右側に書くのが被除数、左側に書くのが除数という位置関係になります。親が言葉だけで説明すると難しく感じますが、実際の筆算を指さしながら「ここが商だよ」と確認していくだけでも、子どもの理解はだいぶ安定してくると思います。
商は「1あたりの量」や「何倍か」を表すことが多い
商は単にわり算の答えというだけでなく、「1あたりの量」や「何倍か」を表していることが多いという点も大切です。「12個のお菓子を3人で同じ数ずつ分けると1人何個か」という問題なら、商は1人分の個数を表しますし、「ある数は別の数の何倍か」という問題でも、商が倍率になります。中学受験では、割合や速さ、単位量あたりの量など、商の考え方がそのまま別の単元に広がっていくので、家庭でも「この商は何を意味しているのかな?」と一緒に確認していくと良いと感じます。
商と余りをセットでイメージする
整数のわり算では、商と一緒に余りが出てくることがあります。「13÷4=3あまり1」のような形です。このとき、商は「きっちり分けられた分」、余りは「どうしても余ってしまった分」と考えると分かりやすくなります。家庭では、お菓子や文房具などを実際に分けてみて、「きれいに分けられた数」と「残ってしまった数」を目で見る経験をさせると、商と余りのイメージがぐっとつかみやすくなると思います。
小学生が商でつまずきやすいポイント
筆算になると急につまずく理由
小さい数同士のわり算はできても、筆算で桁の多い数を扱い始めると急につまずく子は少なくありません。原因の一つは、「どこに商を書くか」「どのくらいの大きさの数を立てればよいか」がイメージしにくいことです。とくに、除数が2ケタ以上になると、「最初はここまでの桁で考える」といった感覚が必要になります。親としては、途中の思考を丁寧に言葉にさせながら、「なぜこの商を書いたのか」を確認していくと、手順だけの暗記になりにくいと感じます。
商の一の位・位取りで迷いやすい
わり算の筆算でよくあるのが、商の桁を一つずれて書いてしまうミスです。たとえば「432÷3」で、本来は百の位から考えるところを、十の位から商を書き始めてしまうと、最終的な答えが大きくずれてしまいます。ここでは、「今考えているのはどの位の数か」「次はどの位を下ろしてくるのか」を、指で押さえながら一緒に確認してあげると良いと思います。商を書く位置に小さく印をつけるなどの工夫も、家庭学習では有効だと感じます。
小数の商や四捨五入での混乱
学年が上がると、小数のわり算や、商を四捨五入して求める問題も出てきます。このとき、子どもは「どこまで計算したらよいのか」「どの位で四捨五入するのか」で迷いやすくなります。親としては、「問題に書かれている指示を一緒にチェックする」習慣をつけてあげるのが大事だと感じます。「小数第1位を四捨五入して整数で答えましょう」と書いてあれば、「小数第2位まで計算してから丸めるんだね」と、声に出して確認するだけでも、ケアレスミスはかなり減っていきます。
商の意味が分からないまま暗算だけが先行する危険
最近はアプリやドリルで、わり算の答えだけをどんどん出していく練習も増えています。それ自体は悪くないのですが、「商が何を表しているのか」が分からないままスピードだけが上がってしまうと、文章題や応用問題で急につまずきやすくなります。とくに中学受験では、商を「1あたり」「何倍」「割合」といった意味で使う問題が多いので、計算ドリルと並行して、「この商はどんな量を表している?」と一言聞いてみるだけでも、理解の深さが変わってくると感じます。
家庭でできる「商」の理解を深める声かけと学習の工夫
日常生活の中の「割る場面」を一緒に探す
商のイメージをつかむには、教科書の中だけでなく、実際の生活場面に結びつけて考えることが大切だと思います。例えば、お菓子をきょうだいで分けるとき、チラシの割引率を考えるとき、ピザを何人で分けるか話すときなど、「これって割り算だね」と親が一言添えるだけで、子どもは自然と商の意味を意識し始めます。「1人分は何枚?」「1人分はいくら?」と声をかけることで、1あたりの量としての商がイメージしやすくなります。
具体物や図を使って1あたりの量を体感させる
低学年やわり算を習い始めた時期には、実物や図を活用するのがとても効果的だと感じます。例えば、20個のブロックを4つの皿に同じ数ずつ並べていくと、1皿分の個数が商になります。実際に手を動かして分ける経験をしたあとで、式「20÷4=5」を書かせると、「5」という商の意味が一気に分かりやすくなります。また、丸や四角を並べた図を描いて同じように分けてみるのも、紙と鉛筆だけでできる良い練習です。
筆算の途中の考えをあえて口に出させる
筆算の練習では、「ただ黙々と計算させる」よりも、途中の考え方を口に出させる時間をとることが大事だと思います。例えば、「今は何十のくらいを割っているの?」「次に下ろしてくるのはどこの位?」といった質問を投げかけることで、子ども自身が自分の考え方を整理するきっかけになります。これに慣れてくると、自分一人で解いているときにも、頭の中で手順を説明できるようになり、ミスの減少にもつながりやすくなります。
小数の商はステップを踏んでゆっくり慣れる
小数の商がからむ問題は、焦らず段階を踏んで慣れさせるのが良いと感じます。最初は、整数と小数をはっきり分けて考え、「整数÷整数」「小数÷整数」「小数÷小数」という順番で少しずつステップアップしていくと、子どもの負担が軽くなります。家庭では、「どうして小数点の位置がここにくるのか」を図や数直線で説明してみたり、電卓を使って答えを先に確認してから筆算でたどり着く練習をさせたりすると、安心感を持って取り組めると思います。
和・積との違いをセットで整理し、中学受験算数につなげる
和・差・積・商をまとめて整理しておくメリット
中学受験を考えるなら、和・差・積・商をバラバラに覚えるのではなく、四則計算に対応した4つの言葉としてまとめて整理しておくと、とても役に立つと感じます。足し算の答えが和、ひき算の答えが差、かけ算の答えが積、わり算の答えが商という対応が頭に入っていると、文章題で「和」「差」「積」「商」という言葉を見た瞬間に、どの計算を使うのか見通しが立ちやすくなります。特に中学受験では、これらの言葉が前提知識として当たり前のように使われるので、早めに慣れておきたいところです。
和については別の記事でじっくり整理しておく
四則計算の中では、足し算の答えを表す和も、文章題を読む上でとても重要な言葉です。合計や全部といった日常の言葉と、和という用語をどのようにつなげていくかについては、別の記事で詳しく整理されています。商だけでなく、足し算の答えとしての和の意味も合わせて押さえておくことで、文章題全体の理解がスムーズになると感じます。時間のあるときに、次の記事も一緒に読んでおくと、算数用語の理解がさらに深まると思います。
小学生でもスッとわかる!算数でいう和とは何か?――意味・使い方・和と差の考え方を家庭向けに整理
積についても意味を押さえておくと応用に強くなる
かけ算の答えである積も、商と同じように、単なる結果の数字以上の意味を持つことが多いと感じます。特に、中学受験では、面積や体積、割合の問題などで積の考え方が何度も登場します。積と商は、かけ算とわり算の関係を通してセットで理解しておくと、図形や割合の単元にも応用しやすくなると思います。積の意味やつまずきやすいポイントについては、次の記事が詳しいので、こちらも合わせてチェックしておくと良さそうです。
算数の「積」とは何か?|意味・使い方・つまずき理由を家庭向けにわかりやすく解説
中学受験算数での商の役割(割合・平均・速さなど)
中学受験の算数では、商はとても重要な役割を担います。割合では、「ある量を別の量で割った商」が百分率や歩合につながり、平均では「合計を人数で割った商」が平均値になります。また、速さの問題では、「道のりを時間で割った商」が速さになります。このように、商はさまざまな単元の「土台」となる考え方なので、小学生のうちから、単なる計算結果としてだけでなく、「何を表している商なのか」を意識する習慣をつけておくと、受験勉強に入ったときに大きな強みになると思います。
まとめ
算数で使う商は、一見すると単なるわり算の答えに見えますが、その裏側には「1あたりの量」や「何倍か」といった大事な意味が隠れています。筆算の手順を覚えるだけでなく、被除数・除数との関係や、商が表している中身を意識しながら練習することで、文章題や応用問題にも対応しやすくなります。家庭では、日常生活の中で「割る場面」を一緒に探したり、具体物や図を使って分けるイメージを体感させたりしながら、和・差・積・商をまとめて整理する学び方を意識していけると良いのではないかと思います。お子さんのペースに合わせて、少しずつ言葉とイメージを結びつけていくことで、中学受験につながる算数の土台が、家庭の学びの中から自然と育っていくと感じます。
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